平 成 15年 9月 議 会
9月議会の予算委員会では、めいっぱい制限時間を使っての質疑応答でありましたが、要旨は以下のとおりです。

1.和歌山下津港について

(長坂) 和歌山下津港において輸出品目では光学機器や化学製品が増加し、鉄鋼も台湾向けが大幅に増加している。
輸入では原料類は増加しているものの、野菜類も低迷、木材にあっては最盛期の一割に落ち込んでいる。
木材の輸入は、かつて和歌山下津港で取り扱っていたものが泉北、岸和田のほうへ移ったり、中国、四国の港ヘ行ってしまったりしているようだが、他港との競争に負けない魅力をつくる努力が必要である。
県の港湾の公共施設の料金,港湾使用料、荷役、荷捌き料についても、条例で定められていても特別料金を設定するなどもっと弾力的に運営する検討をいただきたい。
木材にかかわる地場産業、地場の企業の再生、雇用創出のためにも今一度ご検討いただきたい。

(質問1) 生鮮野菜の輸入も取扱い、背後に中央卸売市場もあるロケ−ションで、今後上屋の整備に当たって保冷上屋のご検討を。

(県土整備部長) 今後のコンテナ取扱量の推移や、保税上屋に対する需要などを見極めながら、その利活用を検討していく。

(質問2) 和歌山下津港の港湾使用料等港湾にかかる公共料金の再検討、それとポ−トセ−ルスについて現況は。

(県土整備部長) 港間競争が激しくなる中、和歌山下津港の魅力をより高めるために、港湾施設使用料の見直しや港湾荷役サ−ビスの向上、あるいは港湾運営の効率化等の課題を総合的に検討していく必要があり、その中でも使用料は重要と考える。
ポ−トセ−ルスは、増加しているコンテナ貨物にタ−ゲットを絞って、中国航路の誘致や韓国航路の利用促進のため、官民一体となって地域ぐるみのセ−ルスを行っていく。

(質問3) 台風14号の襲来で韓国釜山港のコンテナタ−ミナルは大被害を受けている。この影響については。

(県土整備部長) 被害があったのは特定のバ−スに限定されている。
和歌山に来ている3便のうち1便がそのバ−スを使用しており、その便は中国関係の貨物を多く取り扱っているので、この便についての影響は大きい。

(質問3) 建設残土の処分の現状は。

(県土整備部長) まずその残土の発生を抑えるとともに、土が発生する工事と盛り土等に利用する工事との調整を極力して再利用するいわゆる工事間利用を促進するように努めている。
工事間利用できないものについては、県内3ヵ所の公的な残土処理施設や民間の残土処分場へ搬出して適正に処理を行っている。

2.救急医療について

@ 心肺蘇生のさらなる普及について

 和歌山市では消防局が市の教育長あて要請を出して応急手当や心肺蘇生法の普及員講習を行って教職員に対して学校に少なくとも1人、翌年に1人計2名の普及員をつくるべく講習をしていただいたり、市内の小学校、中学校60校を対象に来年度総合学習の中で生徒の心肺蘇生法のリ−ダ−養成を行う計画もあるとうかがっている。
ぜひ近い将来教職員については救命講習を必須講習にしていただきたい。

(質問1) 県立学校やPTA、あるいは各自治会等への積極的な研修の呼びかけを。

(福祉保健部長) 乳幼児の死亡原因に不慮の事故が常に上位にあるため、本年度から心肺蘇生法を知っている保護者の割合を100パ−セントにすることを目標として、全市町村の乳幼児の保護者を対象とする講習会を保育園、幼稚園、育児サ−クル等で始めた。
県立学校や小中学校については、保健体育等の授業でダミ−人形などを使って実施した。
県としては引き続き医療や消防機関、市町村、保健所等が一体となって普及啓発に努めていく。

(質問2) 心停止が発生してから3分後に除細動できれば70パ−セントを救命でき、5分後に除細動できれば50パ−セントを救命できるが、除細動までに10分以上が経過するとほとんど救命できなくなるそうだ。
早期に除細動できるように自動体外式除細動器(AED)普及のご検討を。

(福祉保健部長) AEDについては、本年4月からこれまでの医師や航空機の客室乗務員に加え、救急救命士も使用可能となり、大きな成果をあげている。
厚生労働省は本年9月、一般の人にも条件付きでAEDを使うことを認める方針を決め、近く取りまとめられる予定だ。県としても、国の動向を見守り、救急医療専門委員会等でその普及について検討していく。

A 小児救急医療について

少子化の進行、育児不安の増大に伴い、小児科専門医の不足や小児科の縮小、開業医の時間外診療の減少などが見られ、小児医療の不採算性もあいまって病院小児科のマンパワ−不足が叫ばれている。
また、少子化、核家族化、それに女性の社会進出等育児不安が増大し、より質の高い医療を求めて病院小児科へ救急患者が集中して、小児科の過重労働が見られ、女性小児科医の多くが辞職したり、小児科医の飛び降り自殺等社会問題化しつつある。

(質問1) 開業医も含めた各医療圏域での輪番制整備に当たって、県の強いリ−ダ−シップを。

(福祉保健部長) 2次医療圏域ごとに病院、地元医師会、小児医療関係者、行政による協議会等を設け、小児輪番制の実施等について検討いただいている。
本年度は那賀、橋本、田辺の3医療圏で開始した。未実施圏域については、小児科医の数が少ない等多くの課題があるが、県としてなお一層関係機関等に働きかけていく。

(質問2) 内科医に対する小児救急医療の専門知識研修によって、小児救急医療に従事する医師を確保する事業の進捗は。

(福祉保健部長) 研修については、紀北、紀中、紀南の3ブロックで年末を目途に実施することとし、現在、研修内容について医師会、医大病院と検討している。

(質問3) 小児科の不採算性を是正するための国の動向は。

(福祉保健部長) 小児救急医療体制整備における自治体病院の役割が高まってきている。
今年度から自治体病院の小児医療にかかる不採算部門や小児救急対応の運営に要する経費の一部については一般会計からの持ち出しが認められ、その一部は特別交付税措置が認められるようになる予定だ。
診療報酬については、来年度改定に向け、検討されていると聞く。

(質問4) 当直小児科医の救急現場での過労状況にかんがみ、小児科医のさらなるマンパワ−確保については。

(福祉保健部長) 当面は内科医に対する研修実施と、平成16年度から小児科等が必修科目となる臨床研修制度がスタ−トする。
これが定着すればマンパワ−確保もある程度改善できると考える。

(質問5) 「子供はここへ来れば安心」という小児医療の拠点病院的な体制をとって欲しい。
地域小児科センタ−病院構想について和歌山県の考えは。

(福祉保健部長) 小児救急医療資源の少ない医療圏においては、地域小児科センタ−病院的役割を担う小児拠点病院の整備等について検討している。

3.中高一貫教育について

 県中高一貫教育推進懇談会の報告書によれば、「中高一貫教育は、6年間にわたる計画的、継続的な学習指導を行う中で、生徒の個性を伸張したり、社会性や豊かな人間性を育成したりするなど、ゆとりの中で系統性を持たせた特色ある教育を行うことができる」とある。
確かに6年間もあれば生徒の根気が続く限りは計画的に継続的に学習指導が行えるかもしれない。
親としても高校入試のことでハラハラしたり頭を痛めたりすることがなく一度入ってしまえば安心は買えるかもしれない。
しかし私も過去の中学校、高校時代を振り返って、生徒の立場に立つならば、心身の発達がいちじるしい多感な時期に6年間同じ環境でいると、本当の我慢強さを醸成すべきときに、「ゆとり」ではなく、「ゆるみ」「中だるみ」が生じてくる恐れが充分あると思う。
そこに優等生と落ちこぼれという二分化が今より目に見えた形でおこってきやしないかと憂慮する。
6年間の固定化で学習環境になじめない生徒には深刻だろう。
中学校、高校それぞれ3年間の心の切りかえは必要だ。
高校入試が過当な受験戦争を呼ぶといっても、競争意識は人間生きていく上で絶対必要だ。
それより受験教育の低年齢化が一層促進されるのではないか。
私立公立を問わず、中高一貫校へ入学するために小学校の時代から塾通いを強いられたり、調査書での選考のために子供達が日常的に縛られて点取り虫のような子供が増えてきかねない現実がある。
また小学校を卒業する段階で18歳までの進路を選択させることにはどうしても無理があるような気がする。
要は親の意志で入学させるようなものだ。  
もう一つ心配なのは身体の大きさの違い、心の発達状況の大きなギャップの中で、日常の学校内での活動に様々な問題が起こりはしないかということである。

 とにかく中高一貫教育の導入に当たっては中学校、高等学校という中等教育のあり方を様々な角度でじっくり検討いただきたい。

(質問1) 併設型中高一貫教育の導入について教育長の所見は。

(教育長) すでに連携型で相当な実績をもっており、その成果を十分考えながら次の段階としての中等教育の多様化、複線化ということから新たな段階としての中高一貫教育を来年度から導入することにした。

(質問2) なぜ向陽高校に白羽の矢を立てたのか。

(教育長) 学校自身の意欲的な取り組み、準備体制があってこそ成功に結びつくということから、向陽高校は極めて熱心に早い段階から綿密な準備を整えてきた。
その前提として、70分授業、2学期制、環境科学科の導入、文化科学科の設置等々極めて完成度の高い準備体制が会ってこそ今回したわけで、学校の気持ちと県教委の考え方が一致したということだ。

(質問3) 私立進学校で「中等教育学校」の形で6年間一貫の教育が行われているが、そもそも公立とは建学の精神が異なる。
文武両道でのびのびと勉学にいそしみ、スポ−ツで身体を鍛えるところに公立学校の良さはある。
私立の後追い、偏った教育現場にならぬよう配慮を。

(教育長) よくいわれている「文武両道」という言葉のような幅広い人間性、豊かな教養、そのためのカリキュラムなり学校での活動なり今完成に向かって最終段階に来ている。
決して私学の後追いにはならないつもりだ。

(質問4) 生徒が6年間にマンネリにおちいって、ゆるみたるんでしまわないような配慮は。

(教育長) そんな心配が出てくる大きな原因は、生徒が目標・目的をはっきりもち得ないことから出てくるのではないか。
併設型一貫教育の中では進路に関するガイダンス、自分がどういう目的でどういう人生を歩むのか、何を勉強するのかについてのきめ細かいガイダンスを重視して、決してマイナスイメ−ジにならぬ様最大限の配慮をしていく。

4.ライフラインの確保に関連して〜南海本線紀ノ川鉄橋について

この鉄橋は今年で100年目を迎えている。
通常架け替えがなされた橋梁が使用された平均年数は50年程度といわれている。

(質問1) 南海、東南海大地震がきたときの耐震性、特に津波が襲来したとき、大丈夫か。

(企画部長) 会社としては平成6年から継続監視を行っている。
本県の地域防災計画の鉄道施設災害予防計画において、南海電鉄が鉄道施設の地震災害予防のための諸施設の整備を行うこととしている。
県としても会社に徹底の申し入れを行う。

(質問2) 先の南海地震や阪神大震災でもびくともしなかったということだが、橋脚の水中での調査等微に入り、細にわたった調査がなされているのか。

(企画部長) 直近では平成13年11月から14年3月まで、大規模な詳細調査を行って、これに基づき必要な補修を行っている。
下部工、橋脚の検査については、川床の変動調査と橋脚の衝撃振動調査を実施して異常はなかったと聞いている。

(質問3) もし鉄橋が崩壊したりして電車の運行がストップするような事態になった場合、和大新駅の建設をより積極的に推進する必要があると思う。 新駅計画の進捗状況は。

(企画部長) 概略設計は、県、市、南海電鉄、土地区画整理組合の4者によって、協定に基づき、平成13年3月に設計に着手して、本年4月に完了している。
駅の位置は三笠池の北側、それから仮の線を設けない別線方式で、事業費については約29億7千万円としている。
現在県・市が協力して同事業の導入を図るために国と協議を重ねているところだ。

(質問4) 和大新駅計画に対する知事の意気込みは。

(知事) 知事就任してすぐにものすごく熱心に調査してもらった。
この駅の重要性は認識しており、国とも協議しながら引き続き前向きにやっていきたい。

(長坂) 計画の進み具合から判断して、県で調査費でもつけてもらって防災面の配慮もして欲しい。