長政研レポ−ト vol27 千鳥号 議会報告

 

<平成19年9月20()9月定例県議会一般質問>

 今回は以下、産業振興、医療、そして教育3点にわたって感ずるままに質問をさせていただきました。

1.           和歌山県の農産物の食品加工戦略について

(長坂)和歌山県の農産物、特に果樹については、みかん、柿、梅、それに桃、キウィ、イチゴ等全国トップレベルの生産量と品質で営々と果樹王国を築いてきた。生産技術の研究開発についても、本県は押しも押されぬトップの地位を確保している。しかし加工については、せっかくの恵まれた高品質の農水産物資源をまだまだ活かしきれていない気がする。品質の争いだけではやがて他県に追いつかれてしまう。機能性や加工技術を付加していかないと和歌山県のブランド維持は到底難しい。他の都道府県では、多くのところで「地域でとれる農産物活用のための食品の加工研究開発」を機関を作って取り組んでいる。宮崎県では、元々工業技術センタ−から独立した食品開発センタ−があり、福井県では、農林水産部の中に農業技術経営課があって、その研究機関として食品加工研究所がある。その他、北海道、富山、福岡、熊本、秋田、長野、石川等各県に食品加工研究機関があり、どこも自らのふるさとの特産品づくりに躍起である。和歌山県の農業が大飛躍するためにも加工食品、あるいは機能性食品の研究開発に中核となる機関が必要ではないか。和歌山県でも生産と販売の間の中流域とも言うべき食品加工、機能性研究のために既設の公共機関を連結させ、企業の協力を得ながら食品加工に特化した研究開発機関、あるいは食品加工クラスタ−をつくれないものか。

(農林水産部長)果実の消費が近年減少傾向にあって、今後の農業振興を考える上で、単に生産したものを出荷するだけでなく、食品産業との連携による加工品づくりを進めて、新たな需要の創出につとめていく必要があると考える。食品加工の研究開発機関として、県と県農協連合会、そして県内全農協が出資した、「()和歌山県農産物加工研究所」が紀の川市桃山町にある。農協等からの依頼による新たな加工品の開発や農産物の持つ機能性等に関する研究などを行っている。また、平成17年から、果樹試験場、県立医大、近大との連携のもと、みかん、柿、梅といった本県を代表する果実を用いて、柿酢入りみかんドリンク等の新たな機能性飲料の開発に取り組んでいる。今後同研究所あるいは、県下の試験場などの研究機関を核にして、工業技術センタ−との連携をいっそう密にし、食品製造業者等で組織されている和歌山県食品産業協議会と協力しながら、地域の特色を活かした加工品作りというものについて、積極的に推進してまいりたい。

(長坂)せっかく食品の販売流通のエキスパ−トというべき県食品流通課をつくっていただいた。大手ス−パ−等がどういうものを売りたいのか、どんな販売戦略をもっているのかというところから逆算して、どんなものを作ればいいか、農産物にどんなものを付加、どのように加工すれば良いのか、といった生産からエンドユ−ザ−への販売までの大きな戦略を立てることが必要だ。そこに食品加工、食品の機能性開発研究は大きな意味を持ってくる。アグリから派生するビジネスの分野で、県経済をもっと活力あるものにすべく、和歌山県ならではの農水産物をさらに活用するための県の食品加工戦略について問う。

(知事) 今後消費者ニ−ズに対応した商品開発など、食品加工分野での取り組みが、地域の農業の将来を、雇用の将来を左右するのではないかと考えている。7月には農産物の加工、販売促進に関するアクションプログラム2007を策定して、鋭意これに基づき取組を進めている。農産物加工については、それぞれの地域において、生産者と食品加工業者の連携が大切であって、その推進母体としての地域協議会の立ち上げに取組む一方、地域団体商標登録に結びつくよう、サプライヤ−としてマ−ケット側からの提案等も取り入れた商品開発に努めるなど、恵まれた和歌山の地域資源を活用した裾野の広い「産業としての農業」を育てていきたいと思っている。議員指摘の「売りたい」と企業が考えるようなものをつくる、提供するということには同感で、一例が、大手ス−パ−と組んで、最近みかんジュ−スを出させていただいた。このような試みを、県、企業の方々、或いは農業者、農業団体の方々と精一杯、緊密な連絡をとって進めていきたい。

(長坂)大学の研究者の中には、他の大学から転勤して来られた方、また企業で技術者としてご活躍された方等いらっしゃる。地域社会の中で、その地方のため、和歌山県のため、自己の持つ専門研究、ノウハウを活かして、いい「ものづくり」をして地域を発展させたいという気持ちをお持ちの方も少なくない。この情熱を県に受けとめていただき、むしろ大いに利用していただきたい。そのための受け皿が食品加工研究開発センタ−のようなものだ。企画、商工と農林の垣根を越えた取組を今すぐ実践してみてはいかがか。

(知事)そういうふうに部局を超えて協力しながら事を進めるのがこれからの県庁に求められる大きな要素だと思う。平成161月より、わかやま産業振興財団テクノ振興部に農林水産総合技術センタ−から研究員を派遣して、近大、和大等との連携のもと、共同研究に取組むなど、有用な試みをしている。農業と絡めたバイオテクノロジ−の研究開発を国の競争的研究資金を導入して、数年間実施している。これも企画部だが、農林水産部と非常に協力しながら実施している。県庁ではヘッドクオ−タ−制を作っていて、特定の責任者をヘッドクオ−タ−にして、それで横の連絡を取らせるようにしている。食品流通及び食品加工については、今食品流通課が、企画部や商工観光労働部と密に連絡を取っている。多くの人的資源、多くの食品資源を全部糾合して、これからも研究開発と農業と食品加工業の振興と3つあわせてぜひ元気な産業をつくっていきたい。

(長坂)和歌山県の一番手っ取り早い産業振興のために、食品加工専門の研究センタ−の創設、あるいは食品加工研究に取り組む集合体、クラスタ−作りをどうか前向きに検討いただきたいと要望する。

 

2.           和歌山県内の医師確保と開業医について

(長坂)厚労省は医師不足や地域偏在への対応策として開業医と病院の勤務医との格差是正に踏み込もうとしている。開業医の収益源を見直して、夜間診療等への取組を促して、病院の勤務医の夜間の患者集中による過大な負担のために患者に手が回らないようなケ−スが起こらないよう、また過労状況を改善することを目指しているようだ。確かに過重労働を理由に開業医に転進する勤務医も少なくなく、日曜祝日を含めた24時間体制の病院の勤務医不足に拍車がかかっている現状がある。なるほど地域の基幹病院の医師不足は深刻であり、開業医に協力を求めていくことしか当面医師不足の解消は考えられないと思う。

 しかし開業医からすれば、勤務医を経て開業した方も多く、当然平均年齢は病院の勤務医より高いし、日頃の診療に加えて、時間外診療、往診、そして日曜の救急センタ−当直はたやすくできるものではないし、開業医の医者としての士気に関わるような義務付けも現実的には厳しいものがあろう。和歌山県全体からしても医師の地域偏在はあって、和歌山市、岩出市、そして紀の川市などで特に多く、開業医数は全国でも上位クラスである。全県的に医師の地域偏在にならぬよう、基幹病院に専門医がいない科が発生しないよう、病院と開業医がうまく連携が取れればと望むものだ。また医師としての技量と使命感を持った総合診療医を養成していくことも医師不足の解消の一つになると思う。

 県当局において、和歌山県全体を見渡したバランスの取れた地域医療を展開できるよう、地域偏在にならないよう医師を確保するため、開業医と勤務医との連携による県の医療システムを構築いただきたいがどうか。

(福祉保健部長)議員指摘のとおり、医師の地域偏在や開業志向等により、地域の基幹病院における医師不足は深刻な状況と認識している。県としてはわかやまドクタ−バンク制度や地域医療支援事業など様々な医師確保対策を実施している。安心・安全の救急医療体制を確保するため、開業医と勤務医が連携して圏域を超えた広域救急医療体制を構築する地域医療連携モデル事業の補正予算案を今議会に上程した。新宮市立医療センタ−が実施する日曜祝日の救急日直において、新宮市医師会、東牟婁郡医師会及び三重県の紀南医師会に所属する開業医が、同センタ−の勤務医の代わりに診療を行い、当該勤務医の負担軽減を図ろうとするものだ。今後県としてもこのモデル事業の評価を行った上で、関係者・関係機関との協議等を行いながら、必要な地域に対して導入を検討していきたい。

 

3.           学力向上とゆとり教育について

(長坂)昨年10月に安部前首相の肝いりで「教育再生会議」が17名の有識者を集めて設立された。今年1月には「ゆとり教育」の見直し等第1次報告が提出され、61日の第2次報告では、「徳育の新設」や「学力向上のための土曜授業の復活」等が安部前首相によって強調されたと聞く。この教育再生会議の報告を参考にした形で830日、文部科学省は学習指導要領の改正案として、小学校において、「総合的な学習の時間」を小学3年以上で週3時間行われていたのを1時間ずつ削減し、国語・社会・算数・理科・体育の総授業数を約1割増やし、高学年で「英語活動」を週1コマ程度も受けるといったところが示された。中教審は年度内の改定をめざしているとのことだ。まさに「ゆとり教育」の象徴だった総合学習が半ば否定されたことになる。授業内容はまさしく教師の指導力に左右され、場合によっては「遊びの時間」になりかねない部分もあったと聞く。また、思考力や意欲などを育てるため、「書く」ことを全教科で重視しており、その実現のために授業時間を増やすことが必要だとしている。「書く」ことによって覚えることにも役立つし、表現力も自ら身に付くし、自ら考える気持ちにつながり、これは評価したい。しかし、土曜授業の復活には踏み切らず、週5日制は堅持されている。ゆとり教育の導入と完全週5日制に伴う授業時数2割カット、授業内容3割カットで「生きる力」を育てるのだと鳴り物入りで施行された時も反対が非常に多く、私自身も、学力の低下は必ず起こるし、土曜の休みも子どもたちに有効に作用せず、むしろ休日が続いて月曜日の学習意欲にも影響すると反対の意を述べたこともあったが、まさにそのとおりになったわけで、はじめからこの揺り戻しが予想されていたことである。学習内容については昭和50年代のピ−ク時より実に「半減」しているのだ。しかし、今回も体裁を繕っているのか、結局土曜授業に踏み込めず、平日の授業時数を約1割増やして、総合学習を3分の1減らしただけという小手先の改革で終わろうとしているところに、文科省の方々も相変わらず教育現場をしっかり見ていただけていないと感じざるを得ない。日本人は今もはや勤勉な国民とは言えなくなっている。ゆとり、ゆとりといっている場合ではない。ほんとうに真剣に小学校の時代から自然に机に向かえる時間を多くすることを考えなければいけないと思う。ゆとり教育では、暗記よりも自分で調べ、問題を解決できる力を重視するとあるが、暗記する時間を減らしたからといって思うように応用力なんて簡単に育つものではない。暗記は「詰め込み」ではない。

 文科省や中教審の小手先改定に惑わされず、和歌山県においては、自分のふるさとに愛着、誇りをもてる教育を、そして常識と良識のある和歌山県人を育てていただきたいと思う。私はゆとり教育に反論するものだが、和歌山県において実施されてきたゆとり教育についての教育長の所見は。

(教育長)「ゆとり教育」については、本県においても、その趣旨を踏まえ、学習指導において、じっくり学習に取組んだり、体験的な活動を有効に取り入れたりすることにより、子ども達の実感を伴った理解が深まったものと認識している。一方、学力の状況を把握するために実施した県の学力診断テストの結果では、各教科ともおおむね良好であったものの、読解力や思考力などの課題が明らかにされた。いわゆる「ゆとり教育」は、その趣旨が十分に生かされなかった面があることも指摘されているので、今後学力にかかる課題を解決し、教育本来のねらいを十分に達成するため、いっそう指導方法の工夫改善につとめる。

(長坂)今回の改訂で「総合的な学習の時間」が3分の1減少される分、他の教科に「自ら学び、考え、主体的に判断する力」を育てるべく反映していくというねらいがあるようだが、本県における「総合学習」の教育現場における実態はいかがであるか。

(教育長)総合学習の時間については、当初ねらいに沿った取組が十分でない状況も見受けられた、そのため、モデル航の実践の普及や各市町村教委への指導を充実させることにより、小学校での英語活動や防災教育、環境教育、ふるさと教育など地域や学校の特色を生かした多様な取組が多くの学校で展開されるようになった。総合学習の時間は生きる力をはぐくむ教育の中核をなすものであって、本来の学びを取り戻し、真の学力の向上につながるものだ。今後もこの趣旨を大切にしながら教育現場への指導の徹底を図っていきたい。

(長坂)今は休日になっている土曜日の、子どもたちにとっての効果的活用についての教育長のお考えは。

(教育長)土曜日等休日を子どもや大人にとって意義あるものにするため、家族や地域の人々とのふれあいや子どもの体験活動を豊かにし、家庭や地域での子育てを推進することが大切である。県・市町村では「放課後子ども教室」を活用して、週末や放課後に子どもたちの安全・安心な活動拠点を設け、地域の方々とともに勉強やスポ−ツ・文化活動、交流活動等を実施している。現在国においても土曜日の活用について弾力的な取り扱いが検討されているので、子どもの発達段階や学校の二−ズに応じて、幅広い観点から特色ある取組が展開されるよう、市町村教委とも連携して取組を推進していきたい。

(長坂)今回の改定案には体力低下も今の子どもの抱える大きな問題ということで、他の主要教科に加えて体育も1割授業時間を増やしていただけることは歓迎するが、本県も8年後に国体を控え、今後教育委員会として小中学校における体力向上に向けた基本方針を問う。

(教育長)体力向上に向けての基本方針については、多様でバランスの取れた運動の機会を多く設けるとともに、子どもたちに体力づくりの必要性や合理的な運動の仕方を理解させ、生涯にわたって主体的・積極的に運動に親しむ資質や能力を培うことが大切であると考えている。そのため、小・中・高等学校合同での体育研究会を実施するとともに、昨年度は、新たに小学校においても体育主任者会を開催するなど、体力向上の核となる学校における体育指導の充実・向上を目指し、工夫と改善に努めている。昨年度から、家庭の協力を得るよう「元気アップ親子セミナ−」を実施し、本年度は県内の小学生や園児を対象にインタ−ネットを活用した「紀の国チャレンジランキング」を創設し、本年81日にホ−ムペ−ジを開設、運用を開始した。今後とも多様で着実な施策を積極的に展開していきたい。

(長坂)「確かな学力」があってこそ、「生きる力」がはぐくまれると思う。本来ゆとりを持って教えるには時間と労力がかかる。だから確かな学力をつけるには土曜日も有効に使うべきである。そして日曜祝日は教師も子どもも完全にフリ−で休み!私自身は教育にはメリハリが一番大事だと信じている。