長政研レポ−ト vol.30号  節季号 議会報告

 

<平成20620日 6月県議会 一般質問>

1.海の森づくりについて

(長坂)今回も被覆、消波ブロックを沈めた目良漁港近くの「天神崎の自然を大切にする会」の方にお世話になって、昨年1月、6月、7月、そして今年5月末の水中撮影写真をいただいた。今年の531日撮影されたものに、海藻は確かに多くはないが魚や貝、ウニ、それにイソギンチャク、ナマコ等の生息はかなり進んでおり、黄、赤、緑のサンゴの一種(ソフトコーラル)ではないかと思われるようなものが付着しているのが印象的だった。県外の藻場で海の森づくりとして様々な努力がなされている。長崎県大村市漁協では、コンブを養殖し、貝類の格好の餌になり、稚魚などの生育場としても役立っている。熊本県の天草市水産研究センターでは魚類養殖が盛んだが、その養殖から出される餌が原因の過剰なリンや窒素を吸収させるという趣旨で養殖漁場内にマコンブやワカメの栽培、そしてアワビの試験養殖が始められている。徳島県阿南市の大潟漁協では、「アマモ種蒔活動」を行い、また水質浄化に着目して2006年よりマコンブ養殖を行い成功したそうだ。熊本県水俣市漁協でも、アワビの陸上養殖の餌に使用する海藻として、マコンブの種糸をブイに結びつけ、試験的な育成を行ってきた。漁協では海藻の重要性を再確認し、藻場として再生に取り組む構想を「海藻の森」づくりとして位置付けている。海の森づくりプロジェクトパイロット事業の進捗状況は?

(県土整備部長)由良町の大引漁港、田辺市の田辺漁港、白浜町の志原海岸、串本町の下田原漁港の4海岸で、防波堤等の整備を行う際に用いる海藻の育成しやすいブロック等を設置した。また産学官で藻場育成技術の検証を行う協議会を設立し、藻場育成技術に関する調査を開始した。評価には最低3年程度の追跡調査が必要なので、今年度も春、秋の2回調査を行い、それらの結果をもとに評価を行う。

(長坂)全国各地で大型海藻コンブ養殖による海の森づくりの取組みがなされているが、本県ではどうか。

(農林水産部長)本県では、コンブの栽培については海水温が20度以下の冬季限定になり、生育期間が短く、十分な成長が望めないので、同じ褐藻類の温暖な海域に適したヒロメについて、平成15年度から水産試験場が串本町の浅海漁場において、養殖業の収益性の向上、また養殖漁場の水質を改善する目的で魚類との複合試験を実施している。今後も地域特産種のヒロメと魚類の複合養殖を推進していく。

(長坂)コンブに限らずワカメや他の海藻もロ−プをたらしておくだけで自然と生えてくる。ロ−プが多ければ多いほどその一帯が海藻の森になるはずだ。そこが小魚、小生物の隠れ家となり、それを狙って大きな魚もやってくる。藻場を具体的に再生する試みとしてロ−プによる海藻の森魚礁を作ってはいかがか。

 本県の海藻栽培の現状と合わせて答えてほしい。

(農林水産部長)本県で生産されている海藻は、主にワカメ、ヒジキ、テングサ等で、その9割が紀南地方中心に生産されている。近年磯焼け現象の中で、藻場の再生を図るために、水産試験場で一般にカジメ類が生育できる限界といわれる水温25度を超える高水温でも生育できる品種育成を行い、現在磯焼け地域である日高町地先で実用化に向けた実証実験を行っている。今年度は和歌山市など5市町村において自然石や藻場礁の設置を行うとともに、これまで試験段階であった有用藻類であるヒジキの移植の実用化等も行う。ロ−プを用いた藻場育成については、過去に水産試験場でカジメ類について試験を行ったが芳しい結果が出ていない。今後他府県の状況等も見ながら、藻場育成の観点からその可能性を検討していく。

 

2.食品加工戦略について

(長坂)本年521日付で「食品加工」に係る関係施策について組織横断的に関係課を統括すべく県組織内に設置されたヘッドクオ−タ−について尋ねる。

(知事)産業界としては、農業をやっている人、加工をやっている人、それから販売等々全部連携しないと産業としてうまくいかないことから、それを解消するためヘッドクオ−タ−をおいて、農林水産政策局長がその任に当たる。

(長坂)文科省は複数の大学が教員や施設を出し合って授業を行い、各大学連名の学位を授与する「共同学部」「共同大学院」を作れるよう大学設置基準を改正する検討を平成19年度より始めている。複数大学で先端分野の高度な研究を行うことにより、国際競争力の強化につながることを期待している。平成20年度中に基準を改正し、平成22年度からの新制度スタ−トをめざしている。今年19日に大阪府の関西、大阪医科、大阪薬科の3大学が21世紀の「生命の時代」を担う、工学、医学、薬学を学際的に学んだ人材、かつハ−ド面、ソフト面(教養、心理、倫理面など)も兼ね備えた看護師の育成を目的として3大学による共同学部を設置することに同意し、協定書に調印した。大学としても少子化に伴う生き残りをかけているし、人材や施設の共用によるコスト削減等のメリットもある。本県において、県内の大学、そして県外の近隣の大学にも声をかけて、食品加工における共同学部を設置することは、時代の流れ、和歌山県の将来の発展・飛躍のための方向性に合致しているのではないか。大学関係者以外の方、たとえば県職員等にも教職員として入っていただいて、地域貢献のための食品加工研究の核として、また本県の将来を担う人材の育成のためにも、和歌山県ならではの大学の共同学部を作る、そんなコ−ディネ−トを知事にお願いしたいがどうか。

(知事)大学の共同学部については、私どもも県の中でどういう研究活動あるいは教育活動が行われていくかということには大変関心があり、協力をしていろんなことをやっていきたい。和歌山県の大学も協力しようという機運があって、戦略的大学連携支援事業という文科省の公募事業がある。それに本県の全部の大学がそれぞれの共同授業を受講できるようにしようとか、そのためのハ−ドの支援、たとえばネット等々のハ−ドウェアの支援なんかをお願いしたいということで今申請中だ。

3.南海本線紀ノ川橋梁について

(長坂)紀ノ川橋梁については、平成1311月から平成143月までの間に健全度調査をBMCの指導のもと実施している。上部工、下部工とも問題なしとのこと。平成16年から平成17年にかけては()鉄道総合技術研究所に下部工(橋脚)の耐震性能診断を任せていて、東南海・南海連動型の想定地震動に対しての橋脚の安全性が確保できる結果が得られたとしている。平成10729日付常務会において全面改装の方針で詳細設計の実施を進めることを可決した後の方針変更の大きな根拠となったのだろうから、南海電鉄はこれらの調査結果を堂々と公表すべきではないか。

(企画部長)ともに調査内容をコンパクトにまとめて公表されている。ただ専門誌への掲載であるし、高い専門性があってわかりにくいということもあるので、県民によりわかりやすく周知するように検討してほしいと要請をしている。

(長坂)南海電鉄が紀ノ川鉄橋を安全だというなら、「人々の生命を預かって安全に走らせる」という鉄道会社の使命として、検査結果を逐次公表して報告すべきだ。断固として定期検査後は検査結果を公表いただきたいがどうか。

(企画部長)南海電鉄では法令に基づく橋梁の定期検査を2年ごとに実施して、年1回のホ−ムペ−ジで安全報告書を公表している。今後橋梁の定期検査の結果をそれに盛り込むことや、月1回、駅などで配布している広報誌に記載を検討している。

(長坂)県の南海電鉄からの聞き取り調査によれば、平成166月の常務会において、平成121220日付の常務会の報告にある紀ノ川橋梁の改築のスケジュ−ルを変更したということだが、あまりにも大きな会社の方針転換だ。平成121220の常務会で報告された内容がこの平成166月の常務会でどう転換され、改築スケジュ−ル変更の合意を見たのか確認しているのか。

(企画部長)BMCの指導による詳細調査とその結果を踏まえた補修を実施することにより安全性に関する懸念がなくなったため、改築のスケジュ−ルを平成16年の常務会で変更報告したと南海電鉄に確認している。

(長坂)国交省においては鉄道橋梁の安全性基準は必ず持っているはずだが。

(企画部長)国交省から「鉄道構造物等維持管理標準の制定について」という通達が確かに出ているが、耐用年数等の記載はない。

(長坂)県は近畿地方整備局との間で、紀ノ川鉄橋の安全性について今後も定期的に協議の場を持っていただきたいが。

(知事)和歌山県としては大変大事な県民の足であるから、安全がちゃんと確保できているかどうか、安全だけでなく採算はどうか、ダイヤはうまくいってるか等、我々は無関心ではいられない。県も鉄道事業を見る部署があるので、任務で見に行って、安全も考える。現在近畿地方整備局と県県土整備部はほとんど毎日のように情報交換をしているが、企画部も参加して、自分が必要だと思う情報は権限外でも教えていただくように努力していかなければならない。

(長坂)平成17年から平成18年にかけて、BMCが桁連結工の詳細設計を実施しており、平成20年度より平成22年度の間に桁連結工事を実施するとしているが、実際に時期はいつなのか、どんな内容なのか。

(企画部長)現在、橋桁は橋脚に固定されているが、さらに桁と桁を横から鉄板で挟み込み、それをボルトで締めて伸縮可能な状態で連結させるという工事を今年11月頃から行う予定であると聞いている。

(長坂)平成166月の常務会における全面改築必要なしの方針大転換、改築スケジュ−ルの変更に至った議論の中身をさらに追及して確認いただきたい。

(企画部長)一通りのことは聴取したが、本議場での議論を伝えて今一度確認する。

(長坂)平成166月に改築における方針転換が図られたことは、その時点で当然河川管理者たる国交省に南海電鉄は報告しているはずだ。そのとき国交省はどういう見解を示したのか県として確かめて報告いただきたい。

(企画部長)一度問い合わせてみる。

(長坂)紀ノ川鉄橋の平成13年から14年の健全度調査の概略版を見たら、9箇所ほど劣化が気になる記載があった。しかるべき報告をいただきたい。

 

<平成20624日 経済警察委員会 一般質問

(長坂)メッサオ−クワ等大型店の開店に合わせて、近くの駐車場等に出店し、無料配布物で客の気を引き、高額の布団を販売するという悪徳商法が行われたと聞く。県・市といった行政にも呼びかけ、連携して幅広く広報したらどうか。

(県警本部)悪徳商法については、交番等のミニ広報紙や老人クラブなどの各種会合における講習などを通じて広報・啓発に努めている。広報面ではこれまで各機関が独自に行っているのが現状だ。今後、広報・啓発面でも関係機関、各自治体との連携を深め被害の未然防止とク−リングオフの周知など幅広く広報に努めたい。

 

<平成20918日 9月県議会 一般質問>

1.食品加工等和歌山県の産業振興戦略について

(長坂)先日県工業技術センタ−内の食品開発室を見学したが、若いスタッフが明るい雰囲気の中で元気に働いておられたのが印象的だった。93日・4日で、農業県宮崎県へ行ってきた。宮崎県食品開発センタ−は、食品開発部8名と応用微生物部5名計13名の研究者を擁している。うち3名が宮崎県農政水産部から派遣され、センタ−所員は研究職ではなくて行政職で、本庁との人事交流も行われ、ここで得た知識が大いに役立っているとのことだ。「農業は21世紀の産業」と位置づけ、宮崎県は農業を基幹産業と考えて、生産・加工を連続して考えている。代表的なのは焼酎づくり、特に当センタ−では500年来の焼酎酵母づくりの実績がある。毎年品目を選んで徹底的に野菜の機能性研究を行っている。ゴボウ・サトイモ、及びニンジン葉、ユズやカボスと同類のヘベズの機能性研究を行ったり、生産全国一のピ−マンの種子の抗菌作用の研究、生産全国一の干したくあんに含まれるGABA(ギャバ)の、血圧を下げる、ストレス解消に効くといった機能性研究等実用化に直結した研究を実に数多く行っている。売れ筋商品として焼酎・ワイン、そして東国原知事でおなじみの炭火焼地鶏も当センタ−発だ。()科学技術振興機構(JST)の地域結集型共同研究事業で宮崎大学農学部、医学部とともに「宮崎県産高機能性ブル−ベリ−葉」を用いた飲料の開発を手がけ、平成20年度から経産省の「地域資源活用型研究開発事業」へ移行して商品化、実用化をめざしている。重点テ−マを決めるときは部門ごとに重点化技術をあらかじめ定めて、所内へ上げて内部審査会、その後外部審査会へという手順で、きちんとした外部評価制度がある。次に()宮崎県産業支援財団であるが、当財団のメインを産学官連携と捉え、第1次産品の付加価値向上のための研究開発支援を行っている。地域結集型共同研究事業では財団内にコア研究室を設置して「食の機能を中心としたがん予防基盤技術創出」をテ−マに風土病や肝がんの解明、食の機能性を中心とした予防・治療法の開発と、機能性素材として見出されたブル−ベリ−葉の栽培・育種・加工技術等の確立、がん予防に効果のある高機能性食品の開発に取り組んでいる。この後連続して国の大型競争的研究資金も獲得している。宮崎県も、県、財団が強いリ−ダ−シップのもと、宮崎大学の「農学」と「医学」のリ−ダ−、サブリ−ダ−にその下の先生方を交えて四半期に1回必ず成果報告を求め、年に2回は知事、副知事も交えて、百名を超える人でエンドレスミ−ティングを土日に行っているそうで、わからないことがあればとことん尋ねるらしい。とにかく財団の指導性とやる気がひしひしと伝わってきた。宮崎大学は平成184月より産学連携センタ−を立ち上げ、技術相談・共同研究についてワンストップサ−ビスをめざしている。葛{崎TLOと言う技術移転機関を立ち上げ、研究・技術シ−ズも公開されている。中小企業支援事業に700万円の予算があって、技術力はあるのに金がない中小企業に少しでも自己資金を出してもらって、共同研究1件当たり30万円から50万円の支援をしている。そして地域貢献ということで県主導のもと、大学、JSTNEDOがいっしょに県内4箇所で企業向けアピ−ルを行い、その中で当センタ−の事業を利用した企業に研究発表をしてもらう仕掛けもつくっている。また地方銀行の県内すみずみまである営業所に着目して、金融機関も含めた産学公金連携も行っている。大学が宮崎県、県産業支援財団との協力による戦略会議を開き、技術移転ミ−ティングを行って、出口の見つかっていない特許出願をどうしていくか検討もしている。さて、和歌山県農林水産部で生産に関わってこられた方に、食品加工の際にエンドユ−ザ−の求めるものから逆算した販売強化のための生産を推し進めていただくためにも、多くの人に食品開発室に何年か身を置いて研究いただくことが肝要ではないか。生産部門に戻られたときにも必ずその経験は活かされるはずだ。マンパワ−面、ハ−ド面も合わせて食品開発室の今後の充実についてお尋ねする。

(知事)この9月に県工業技術センタ−食品開発室がサッポロビ−ルと組んで「とろり梅」というネクタ−型の飲料を開発したが、工業技術センタ−と複数の企業との共同開発の結果この商品が全国に流されて、梅の需要もそれによって少し増加した。今後食品開発室の機能の活用を図って、また食品関連の県内中小企業等への支援、新規商品の開発を進める中で、強化をいっそう進めていきたい。設備だけでなくて、人材やスタッフについてもこれから頑張っていきたい。

(長坂)和歌山県でのJSTの地域結集型共同研究事業や、文部科学省の都市エリア産業連携促進事業の研究成果がどうであったか、そこで研究されたものをどう実用化、商品化していくのか、財政的にも厳しい中、次の国の大型競争資金の獲得についてどういう戦略を立てているのか。

(知事)地域結集型共同研究事業については、少し成果に結びつける戦略に始めから欠けていた。ぜひ商品化につながるというものをということで、都市エリア産学官連携促進事業のナノテクで優良企業の参加も得て、成果を上げていこうとしている。実用化、商品化を支援する具体的な方策として、産学官の連携を推進する「新連携共同研究事業」とか、今年度から実施する「和歌山中小企業元気ファンド」を活用して、やる気のある中小企業の方がこの技術を使って何か商品開発したいというときに、さらにまた応援をしていくということも考えている。これまでの研究開発成果や人的ネットワ−クを大事にしながら各分野における第1級の人材を発掘・確保し、このような人材を機軸におくとともに、新たな大型研究資金の獲得などに鋭意取り組んで参りたい。

(長坂)宮崎県においては、県が主体的に研究テ−マを設けて国の競争的研究資金獲得にリ−ダ−シップを発揮して、それに大学等が従うといった図式のようだ。 とにかく県サイドのやる気に満ちた、戦略的な自主性を感じさせられた。ぜひ和歌山県も将来の県政の躍進のために、あくまで県主導で現場サイドの意見を集約した上で、むしろトップダウンで大きなテ−マを設けて、大学等高等教育研究機関や民間企業を動かして、和歌山県初の食品加工技術の実用化、そして商品化をめざしてがんばっていただきたいがどうか。

(知事)地域結集型共同研究事業でのアグリバイオ研究は今年度で終了する。ポストアグリバイオといった研究開発をぜひ見つけてきて、さらにわが県の研究開発、それにつながる産業発展というのを推進していきたい。現在部内で何が対象になりうるか、どの研究開発資金が利用できるかということを検討している。県が主導的な役割を発揮することが、いずれの場合でも、極めて重要であるということは議員指摘のとおりだ。和歌山県の持つ数少ない資源を全部動員して、和歌山の特性を活かした研究開発、それに伴う産業発展を今後とも目指していきたい。

(長坂)食品加工戦略においては、本来、県が何を素材に、何をしたいのか、何年をめどに実用化、商品化していくのか、どんな年齢層をタ−ゲットにしていくか、そしてどれくらいの生産量、販売額を目標にしていくのかといった、具体的な数値目標を立てる戦略が必要だ。ぜひ、和歌山県の目指すテ−マ、目標を知事が世間に示して、それに向かって県が関係研究機関を、そして民間企業を引き込んで、やる気をみなぎらせて、一丸となって、全国有数の「食品加工」県を目指して疾走してほしいと熱望する。

 

2.和歌山県の医療について

(長坂)県外や国外からも関空等を利用して診察・治療に来られる患者を持った先生もおられると聞くが、患者の受け入れが待機期間も少なく物理的に可能になって、他の大学病院等からも医療技術を勉強に和歌山県へ来る先生方に引き続き本県に残ってもらって力を発揮していただければ、和歌山県も和歌山市域も医療都市として発展する将来が開けてくるのではないか。県外から来られた患者の方には、施術後リハビリを兼ねて和歌山県で療養観光を楽しんでいただける。患者、その家族の専門医志向、大病院志向が強くて、どうしても患者が人気のある診療科のある病院へ集中してしまうわけだが、地域の病院、あるいは診療所がその専門医の代わりを、機能を果たせるような医療における連携強化が図れないものか。

(福祉保健部長)医大病院、日赤医療センタ−をはじめ各拠点病院においては、地域医療連携を担当する部門を設置し、地域の病院、診療所等と適切な患者紹介に向けて連携を進めている。県としては、長期総合計画や保健医療計画等に基づき、プライマリ−ケアを推進すると共に、地域連携クリティカルパスを普及させることにより、地域医療の第1線を担うかかりつけ医を支援し、保健医療圏単位で地域医療の充実を図るため、中心となる地域医療支援病院の整備を進めるなど、地域の実情を踏まえた医療連携体制を推進している。今後とも大規模な病院と診療所等との役割分担と連携を進め、予防、初期治療から高度医療、リハビリまで切れ目のない効率的な地域医療体制を構築してまいりたい。

(長坂)最近特に県内の救命救急センタ−を中心に拠点病院への救急搬送が増加している。今一般の救急告示病院も経営の厳しい中、救急患者の受け入れに悪戦苦闘している。医大病院救命救急センタ−でも、24時間体制とはいえ空ベッドがなくてかなりの時間救急制限をせざるを得ない現実がある。救命救急センタ−で応急措置を行って、その後速やかに患者を受け入れてくれる後方ベッド、後方病院の充実はどうしても必要だ。後方病院も医師を始め医療スタッフが不足して重症患者を診たくても診れない状況にある。こうした第3次医療をバックアップできる病院の整備が必要だ。近くの病院・診療所の連携の強化、さらには統廃合も考慮に入れて、関係医療機関が一致協力して医師や看護師のそろった総合病院的組織連携を作っていくことは急務ではないか。県下の救命救急センタ−が患者の受け入れがスム−ズに出来て、重篤な救急患者へ適切な診療を行うことが出来るよう、運用体制の強化を図っていただくと共に、後方支援病院の連携・充実を含めた、時代の二−ズにあった救急医療体制を構築いただきたいがどうか。

(福祉保健部長)本県においては、傷病者に迅速かつ適切な医療を提供するため、消防機関等との連携の下で、傷病の重症度等に応じた体系的な救急医療体制を確保している。和医大附属病院では、高度な治療や全身管理を行う救急部門と一般病棟との連携促進など、重篤で治療の難しい救急患者を計画的に治療するための院内体制づくりを検討していると聞く。県としては、重篤患者の病状の推移に応じ、円滑に受け入れることが出来る、例えば病診連携や病病連携等、医療連携体制の確保に努めてまいりたい。

(長坂)近年看護師不足が全国的に社会問題となっている。医療に対する国民の二−ズは医療の高度化と共に大きくまた多様化して、看護師に期待される役割は大きくなっている。看護師は全国で毎年約5万人が新たに誕生するといわれるが、9.3%が1年以内にやめてしまうという調査がある。現場を離れた「潜在看護師」の離職理由は結婚や出産が最も多いが、労働環境では「勤務時間が長い、超過勤務が多い」「夜勤の負担が大きい」「医療事故への不安」というのが上位だったそうだ。特に和医大附属病院を始め、救急医療や高度医療を担っている県内の拠点病院においては、夜勤が多いなど、看護職員に大きな負担がかかる労働環境のために、看護師の離職も多いと聞いている。県内拠点病院において、看護職員の離職を抑え、看護師が安定して確保できるよう、勤務環境の実態を正しく把握しながら条件面も含めた効果的な医療現場の離職防止対策に取り組んではどうか。

(福祉保健部長)平成19年度には、県立医科大学と共同で、病棟勤務の看護職員を対象に、生き生きと安心して働ける職場作りに関する調査を実施した。休日に休めなかったり、超過勤務等労働環境問題、医療事故への不安、家庭との両立に関する事項が、看護職員の離職に関連していることが明らかになった。現在、和医大においては、この調査の結果を踏まえ、多様な勤務形態の導入、新人教育体制の更なる充実、医療事故防止対策の充実、院内保育所の定員増加等に向けた総合的な取り組みを進めている。今後とも拠点病院をはじめとする県内の病院での看護職員の勤務環境などの実情の把握に努めると共に、効果的な看護職員の離職防止対策に取り組んでいく。